建物が全焼して敷地使用借権を失った賃貸人の損害

最高裁判所平成3年(オ)第825号 債務不存在確認請求本訴,損害賠償請求反訴事件

平成6年10月11日第3小法廷判決

裁判集民事173号133頁,判例タイムズ875号89頁,判例時報1525号63頁

判旨

建物が朽廃・滅失するまでこれを所有する目的で土地を使用貸借していた借主が,その使用貸借契約の途中で同土地を使用できなくなった場合には,特別の事情がない限り,同土地の使用に係る経済的利益を失ったことによる損害が発生する。

この経済的利益は,通常は,建物の本体のみの価格(建物の再構築価格から,経年による減価分を控除した価格)に含まれるということはできない。

使用借地上に所有する建物が,建物賃借人の失火により全焼し,その結果として使用借権を失った建物賃貸人は,建物賃借人に対して,少なくとも,焼失時の建物本体の価格と,本件土地使用に係る経済的利益に相当する額との合計額を,建物の焼失による損害として,請求することができる。

検討

使用借権は,弱い権利とはいっても,建物使用目的のような場合には,少なくとも当事者間においては,それなりに強い権利であるということができるから,経済的利益があると観念することができて,損害賠償の対象となるというべきだろう。

ただ,その財産的価値を算定することは,そう容易ではない。

例えば,平成7年度主要民事判例解説(判例タイムズ913号)の民法22判例(本版例)解説に,考え方が載っている。

 

 

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