裁判データ
- 最高裁平成31年(受)第184号 親子関係存在確認請求事件
- 令和2年7月7日判決
- 出典:民集74巻4号1152頁
- 評釈:戸籍時報No.808
判旨
- 通則法の遡及適用
- 法の適用に関する通則法(通則法)は,法例を全面改正したものであるところ,その附則2条は,同附則3条の規定による場合を除き,通則法を施行日前に生じた事項にも適用する旨を規定しており,その趣旨は,法例の規定及び平成元年改正法の施行日前に生じた事項について従前の例による旨を規定する同年改正法附則2項本文により適用されていた同年改正前法例(旧法例)の規定のうち,通則法によって内容が実質的に変更されていないものについては,これらの規定に変えて通則法の規定を適用してもその結果に変わりがないものについては,これらの規定に代えて通則法の規定を適用してもその結果に変わりがないことから,通則法の規定の遡及適用を認めることとしたものと解される。
- このような趣旨からすると,平成元年改正前法例に明文の規定が欠けていても他の規定の解釈等によってある規範が導かれ,これに代えて通則法の規定を適用してもその結果に変わりがない場合には,その規範は通則法によって内容が実質的に変更されていないものと評価することができるから,通則法の規定を遡及適用することとして差し支えないというべきである。
- 非嫡出母子関係
- 非嫡出母子関係の成立について,旧法令は認知による場合の準拠法のみを規定し(18条1項),出生による場合の明文の規定を欠いており,平成元年改正法の施行前における嫡出でない子の母との間の分娩による親子関係の成立については,準拠法の決定が旧法例の解釈に委ねられていたところ,分娩による直接的な結び付きがあること,親子関係の存否が確定しなければ子の本国法が定まらない場合があること等を踏まえ,旧法例22条の法意に鑑み,子の出生の当時における母の本国法によって定めるのが相当であったと解される。
- 上記親子関係の成立については,通則法附則3条によって通則法の規定の適用が除外される場合に当たらないところ,通則法29条1項は,上記親子関係の成立についての準拠法は子の出生の当時における母の本国法であると規定するから,上記の旧法例の解釈によって導かれる規範に代えて同項を適用してもその結果に変わりがない。
- よって,上記親子関係の成立については,同項が遡及適用されるというべきである。
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