建物賃借人の原状回復義務特約

裁判データ

  • 最高裁判所
  • 平成17年12月16日第二小法廷判決
  • 出典:判例タイムズ1200号127頁,判例時報1921号61頁
  • 評釈:判例タイムズ1210号54頁

判旨

  • 建物賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予期しえない特別の負担を課すことになるから,賃借人に同義務が認められるためには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に明記されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。
  • 本件では,賃借人は,賃貸借契約を締結するにあたり,通常損耗補修特約を認識し,これを合意の内容としたものということはできないから,通常損耗補修特約の合意が成立しているということはできない。→通常損耗補修特約の合意が成立しており,その合意内容を限定的に解する必要はないとした原判決を取り消す。

参考文献

  1. 「判例にみる借地・借家における特約の効力」
    • 澤野順彦著
    • 新日本法規出版

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