最高裁判所平成12年(し)第170号

裁判データ

  • 最高裁判所平成12年(し)第170号 勾留取消し請求却下決定に対する異議申立て棄却決定に対する特別抗告事件
  • 平成12年9月27日第二小法廷決定
  • 出典:刑集54巻7号710頁
  • 評釈:最高裁判例解説刑事篇平成12年度205頁

判旨

(なお書きで)勾留取消しの理由として勾留の裁判自体が違法であると主張する部分があるが,勾留の裁判に対する異議申立てが先に棄却され,その棄却決定がこれに対する特別抗告も棄却されて確定している場合,同じ論拠に基づいて勾留を違法ということはできない。

最高裁判例解説の概要

  • 勾留の取消し請求がされたとき,勾留の裁判自体にいかなる瑕疵のあることが発見されても,勾留に対する不服申立てではない理由で裁判所がこれを見過ごさなければならないというのは正義に反するから,裁判所は,勾留の裁判に重大かつ明白な瑕疵があるような場合は,刑事訴訟法87条により,職権でこれを取り消すことができると解されている。
  • 勾留の裁判に対する不服申立てがされ,これが理由なしとして棄却された場合には,その不服申立てで主張され排斥された論拠に基づき勾留を違法として取り消すことができると解することが不当であるとするのが一般的な理解であると思われ,本件決定も同旨である。
  • その根拠については,1.確定裁判の内容的確定力に基づく制約と考える説と,2.勾留取消し制度本来の趣旨に基づく制約と考える説がある。
  • 本決定は,確定裁判の内容的確定力に基づく制約と考えているものと思われるが,拘束力の及ぶ事項の範囲についてはさらに検討の必要がある。

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