裁判所の釈明義務

裁判データ

  • 最高裁判所平成20年(受)第1590号 雇用関係存在確認等請求事件
  • 平成22年10月14日第一小法廷判決
  • 出典:裁判集民事235号1頁,判例タイムズ1337号105頁,判例時報2098号55頁
  • 評釈:民商法雑誌144巻4~5号550頁

判旨

  • Xは,Yから定年を理由として職を解かれたのに対し,定年を延長する旨の合意(「本件合意」)があったと主張して,雇用契約上の地位を有することの確認等を求めた。
  • 第1審においては,本件の争点は,本件合意の有無であることが確認された上で,認証調べがなされ,Xの請求は棄却された。
  • 控訴審においては,双方が,本件合意の存否について主張をした上で,Yには,Xに対し,定年退職の1年前までに,定年規定を厳格に適用し,かつ,再雇用をしない旨を告知すべき信義則上の義務があり,具体的な告知の時から1年を経過するまでは,賃金支払義務との関係では,信義則上,定年退職の効果を主張することができない旨の判決が言い渡された。
  • 上記訴訟経過の下で,信義則違反の点について判断するのであれば,控訴審は,適切に釈明権を行使して,Xに信義則違反の点について主張するか否かを明らかにするよう促すとともに,Yに十分な反論・反証の機会を与えた上で判断するべきであり,特に控訴審の上記判断は従前の訴訟の経過等からは予測が困難であるから,なおさら,その法律構成の適否を含め,Yに十分な反論・反証の機会を与えた上で判断すべきものといわなければならない。

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