原告に訴訟追行意思がないことを理由に訴えを却下できる場合

名古屋地方裁判所豊橋支部昭和24年(ワ)第40号 前渡金等返還請求事件

昭和33年6月23日判決

判例時報161号21頁

判旨

訴訟の経緯は,以下のとおり。

  1. 昭和24年6月26日,訴状提出。
  2. 訴状には,被告の住所地は北海道と記載されていたが,被告は,横浜市で訴状等の送達を受けた。
  3. 同年8月1日から変更された9月5日の第1回期日において原告訴訟代理人は,被告の住所を横浜市の住所に訂正して被告の再呼出を求めたが,呼出状は送達できず,その後,被告の関係で原告訴訟代理人が行った唯一の訴訟行為は,昭和30年5月25日の弁論期日に,被告の再呼出を求めると述べたことだけである。
  4. 相被告の関係では,昭和24年9月28日に,原告代理人が訴状のとおり陳述して,相被告が答弁書のとおり陳述し,同年10月26日に証人尋問が行われたが,同年11月30日は相被告が出頭せず続行となり,昭和25年4月28日及び同年7月5日は原告が出頭せず続行となり,同年10月11日に休止としたが,昭和26年1月8日に原告から期日指定の申立があって同年2月21日の期日が指定され,さらに同日の期日は変更され,次回期日は追って指定とされた。
  5. 昭和29年4月に着任した裁判官は,昭和30年1月8日に初めて本件記録を目にして,その後,昭和33年6月23日の最終弁論まで,十数回の期日を指定したが,原告代理人が出廷したのは,上記3.の昭和30年5月25日の期日1回のみで,その期日にも,裁判官の釈明に対して,被告の住所を支給調べるから再呼出を求めると述べて延期しただけで,その余の期日は,原告の変更申請又は休止の連続であった。

この場合,原告は,被告に対して訴訟を追行する意思がないものとみなすべきで,民事訴訟法202条(平成8年改正前)に準じて,口頭弁論を経ずして,原告の訴えを不適法として却下するのが相当である。

 

参照

平成8年改正前202条:不適法ナル訴ニシテ其ノ欠缺カ補正スルコト能ハサルモノナル場合ニ於テハ口頭弁論ヲ経スシテ判決ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ得

平成8年改正後140条:訴えが不適法でその不備を補正することができないときは,裁判所は,口頭弁論を経ないで,判決で,訴えを却下することができる。

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