最高裁昭和31年(オ)第559号 損害賠償請求事件
昭和35年2月9日第三小法廷判決
民集14巻1号84頁
法曹時報12巻4号70頁,法律時報32巻11号121頁,民商法雑誌42巻6号106頁
裁判所外で受託裁判官による尋問がなされ,その後の弁論期日には一方当事者本人のみが出頭し,他方当事者本人とその代理人が出頭せず,裁判長が嘱託尋問調書を法廷に提示したところ,出頭した当事者は嘱託尋問の結果を演述援用することなく,他に主張立証はない旨を陳述したため,裁判所が口頭弁論を終結した場合,裁判所が受託判事による証人尋問の結果につき当事者に演述援用の機会を与えたにもかかわらず,当事者がこれをしないものというべきであるから,裁判所が演述援用のないまま口頭弁論を終結しても,何ら違法ではない。
検討
実務上,裁判長は送付された嘱託尋問調書を法廷で当事者に提示するのが普通であるが,これは,旧民事訴訟法(大正民訴)の通知義務に関する規定が削除された結果,これに代わる方法として慣行されているものであって,その提示によって当該尋問の結果が法廷に顕出されたものと解することは困難である。
なお,本件で,原審口頭弁論期日調書に「顕出」した旨の記載があるにかかわらず,原判決は嘱託尋問の結果を事実適示に掲げず何らの判断も与えなかった。
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