最高裁判所令和4年(受)第1744号

裁判データ

  • 最高裁判所令和4年(受)第1744号
  • 令和6年6月24日第一小法廷判決
  • 出典:最高裁判所サイト

判旨

  • 【結論】公社住宅の使用関係についても,借地借家法32条1項の適用がある。
  • 地方住宅供給公社法(以下「公社法」という。)にいう地方住宅供給公社(以下「地方公社」という。)は,住宅の不足の著しい地域において,住宅を必要とする勤労者に居住環境の良好な集団住宅を供給し,もって住民の生活の安定と社会福祉の増進に寄与することなどを目的とする法人であり(公社法1条,2条),その目的を達成するため,住宅の賃貸を含む所定の業務を行うことができるものとされている(公社法21条1項,3項)。地方公社の上記業務として賃借人との間に設定される公社住宅の使用関係は,私法上の賃貸借関係であり,法令に特別の定めがない限り,借地借家法の適用があるというべきである。
  • 公社法は,地方公社において住宅の賃貸等に関する業務を行うには,住宅を必要とする勤労者の適正な利用が確保され,かつ,家賃が適正なものとなるように努めなければならないことなどを規定した上(22条),上記業務を行うときの基準について,「他の法令により特に定められた基準がある場合においてその基準に従うほか,国土交通省令で定める基準に従つて行なわなければならない。」と規定する(24条)ところ,その趣旨は,地方公社の公共的な性格に鑑み,地方公社が住宅の賃貸等に関する業務を行う上での規律として,他の法令に特に定められた基準に加え,補完的,加重的な基準に従うべきものとし,これが業務の内容に応じた専門的,技術的事項にわたることから,その内容を国土交通省令に委ねることにあると解される。
  • そうすると,当該省令において,公社住宅の使用関係について,私法上の権利義務関係の変動を規律する借地借家法32条1項の適用を排除し,地方公社に対し,同項所定の賃料増減請求権とは別の家賃の変更に係る形成権を付与する旨の定めをすることが,公社法24条の委任の範囲に含まれるとは解されない。また,公社規則16条2項の文言からしても,同項は,地方公社が公社住宅の家賃を変更し得る場合において,他の法令による基準のほかに従うべき補完的,加重的な基準を示したものにすぎず,公社住宅の家賃について借地借家法32条1項の適用を排除し,地方公社に対して上記形成権を付与した規定ではないというべきである。
  • このほかに,公社住宅の家賃について借地借家法32条1項の適用が排除されると解すべき法令上の根拠はない。

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