裁判データ
- 東京高等裁判所令和元年(ワ)第2617号
- 令和元年11月7日判決
- 出典:判例時報2453号13頁
事案
- 工事作業員が,作業中に傷害を負ったとして,雇用主Aの元請であるY,その元請であるB及び更にその元請であるCに対し,安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求した事案。
- B及びCは,責任を争うことと,請求原因に対する認否は負って行う旨を記載した答弁書を提出し,第1回期日に陳述を擬制されたが,Yは,訴状の送達を受けたが,第1回期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面を提出しなかった。
- 第1審裁判所は,Yに関する手続を分離して口頭弁論を終結し,第2回期日に,Yに対する請求を全部認容する旨の判決を言い渡した。
判旨
- YはAの直接上位に位置する請負会社であって,事案解明のカギを握る存在となることが容易に想定されるものであるから,B・Cが争う姿勢を示し,あるいはそれをうかがわせる対応をしている状況で,Yが呼出しに1回応じなかったことのみを理由に早々に口頭弁論を分離して終結する必要があったか,甚だ疑問である。
- 判決言渡期日を追って指定とせず,また,判決言渡期日をYに通知することもなく,そのまま判決を言い渡した結果,Yに対する訴訟とB・Cに対する訴訟が別々に進行することになることは,訴訟不経済であるばかりでなく,事案解明や和解による紛争解決の妨げともなるのであって,適切ではない。
- 結局,本件での原審裁判所の処理は,Yの手続的権利に対する配慮に著しく欠けるもので,,その新旧の利益を実質的に害するものといわざるを得ないし,本件訴訟全体の適切な進行という点からも大きな問題があるといわざるを得ないから,原審の訴訟手続には法律違反もしくはこれに準ずる不当な取扱いがあるというべきであり,原審に差し戻す。
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