裁判データ
- 最高裁判所平成24年(受)第1948号 損害賠償請求事件
- 平成27年4月9日第一小法廷判決
- 出典:民集69巻3号455頁
- 評釈:最高裁判例解説,ジュリスト1492号81頁,同1515号81頁(時の判例)
判旨
- A(事故当時11歳11か月)が,小学校の校庭でゴールに向けてボールを蹴ったところ,ボールがゴールの後方にある校門の門扉上を越えて,その先にかかる橋の上を転がって道路上に出たところ,折から自動二輪車を運転してきたBは,そのボールを避けようとして転倒し,死亡した。
- Aは,友人らと共に,児童らのために開放されていた校庭で,使用可能な状態で設置されていたゴールに向けてフリーキックの練習をしていたのであり,このようなAの行為自体は,ゴールの後方に道路があることを考慮に入れても,校庭の日常的な使用方法として通常の行為である。
- また,校庭やゴールの周辺の状況に照らすと,ゴールに向けてボールを蹴ったとしても,ボールが道路上に出ることが常態であったものとはみとめられない。
- Aは,殊更に道路に向けてボールを蹴ったなどの事情もうかがわれない。
- 責任能力のない未成年者の親権者は,その直接的な監督下にない子の行動について,人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務があると解されるが,本件ゴールに向けたフリーキックの練習は,その状況に照らすと,通常は人身に危険が及ぶような行為であるとはいえない。
- 親権者の直接的な監督下にないこの行動についての日頃の指導監督は,ある程度一般的なものとならざるを得ないから,通常は人身に危険が及ぶものとはみとめられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は,当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り,子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない。
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