最高裁昭和51年12月24日判決
裁判データ
- 最高裁判所昭和51年(オ)第46号所有権確認請求事件
- 昭和51年12月24日第二小法廷判決
- 出典:民集30巻11号1104頁
- 評釈:ジュリスト637号90頁,法曹時報30巻3号150頁,最高裁判例解説民事篇昭和51年度485頁
判旨
- 公共用財産が,長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され,公共用財産としての形態・機能を全く喪失し,その物のうえに他人の平穏かつ公然の占有が継続したが,そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく,もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなつた場合には,当該公共用財産については,黙示的に公用が廃止されたものとして,これについて取得時効の成立を妨げないものと解するのが相当である。
- 大審院判例(大正9年(オ)第841号大正10年2月1日判決・民録27輯3巻160頁、昭和4年(オ)第289号同年12月11日判決・民集8巻12号914頁)は、変更されるべきである。
- 本件土地は,公図上は水路として表示されている国有地であったが,古くから水田・畦畔に作りかえられ,原告の祖父がAから借り受けて小作していた当時に,既に水路としての外観を全く喪失しており,その後,昭和22年に原告が田の売渡を受けた当時には,現地の状況は原告の祖父が耕作していた状態と全く同様であったため,原告は,本件土地を含んだ水田と畦畔全体を売り渡されたものと信じ,水田あるいは畦畔として平穏かつ公然に本件土地の占有を続けたというのであるから,本件土地は,公共用財産としての形態・機能を全く喪失し,現行の祖父の時代から引き続き私人に占有されてきたが,そのために実際上公の目的が害されることもなく,もはやこれを公共用財産として維持すべき理由がなくなったことは明らかであり,黙示的に公用が廃止されたものとして,取得時効の対象となり得るものと解すべきである。
最高裁昭和52年4月28日判決
裁判データ
- 最高裁判所昭和52年(オ)第135号建物収去土地明渡請求控訴,同附帯控訴事件
- 昭和52年4月28日第一小法廷判決
- 出典:裁判集民事120号549頁
判旨
原告の前主であるAが所有の意思をもって占有を始めた当時,本件土地は既に隣接地と一体をなして宅地の一部と化し,道路として利用されることもその必要もなくなっており,その後Aが本件土地と隣接地に跨って建物を建築し,同人の死亡後も本件土地はその承継人らによって前記建物の敷地の一部として平穏かつ公然に占有を継続されてきたが,現在に至るまで本件土地が道路として利用された形跡は全く損しないというのであるから,本件土地は,公共用財産としての形態,機能を全く喪失し,A及びその承継人らにより占有を継続されてきたが,そのために実際上公の目的が害されるようなこともなく,もはやこれを公共用財産として維持すべき理由がなくなったことが明らかであるので,本件土地は黙示的に公用が廃止されたものというべきである。
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