判決の原本と正本に不一致があった場合の正本送達の効力

裁判官が作成し,署名押印したものが,裁判書の原本。

原本は1通しかなく,裁判所に保管しておかなければならない。

そこで,当事者には,書記官が「正本である」と認証することで原本と同じ効力を持つことになった写しを交付する。

強制執行は,この正本に基づいて行うことになる。

 

写しなので,その作成過程の中でミスが生じて,原本と全く同一ではない文書が,正本と認証されてしまうことがある。

そのような正本が送達された場合,その効力が問題になる。

送達が有効ではないことになると,上訴期間が進行せず,したがって裁判は確定しないことになる。

 

最高裁判所平成2年(オ)第1869号 離婚等請求事件
平成3年4月2日第三小法廷判決

判旨

1 判決の正本は判決原本のとおり記載すべきものであり,判決原本との間に不一致が生じないよう注意を払うべきことはいうまでもないが,不一致があったとしても,判決原本との同一性が認められ,右不一致が敗訴当事者の上訴に関する判断の障害となり,あるいは勝訴当事者の判決確定に関する期待を覆すこともやむを得ないほどに重大なものであるとはいえない場合においては,その送達をもって判決正本の送達となる。
2 送達された正本に裁判官の氏名の記載がなかったとしても,その様式に照らして当該判決の正本であることが明らかであれば,原本との同一性を認めることができ,上記記載がないことによって敗訴当事者の控訴するかどうかの判断が妨げられるものではなく,その送達の日を基準とする控訴期間の経過によって判決が確定したとの勝訴当事者の期待を覆す程に重大な瑕疵ということもできないから,その正本の送達は有効である(最高裁昭和24年(オ)第276号同25年5月30日第3小法廷判決・裁判集民事3号353頁)。

 

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