仮執行宣言付支払督促に対する異議による訴訟の審判対象と判決内容

裁判データ

  • 最高裁判所昭和32年(オ)第876号 約束手形金請求事件
  • 昭和36年6月16日第二小法廷判決
  • 出典:民集15巻6号1584頁
  • 評釈:最高裁判例解説昭和36年71

判旨

  • 仮執行宣言付支払命令(現在の支払督促)に対する異議は,仮執行宣言前の支払命令に対する異議と同様,単に督促手続を排し通常訴訟による審判を求めるものと解すべきだから,異議申立により移行した訴訟においては,督促手続におけると同一の請求について,その当否を審判すべきものである。
  • 督促手続とその後の通常訴訟とは一体をなすものであり,また,仮執行宣言付支払命令については民事訴訟法437条(平成8年民事訴訟法390条)のような規定がないから,同法198条(平成8年民事訴訟法260条)の適用等の関係上,通常訴訟においてなさるべき判決において,仮執行宣言付支払命令の取消・変更・認可を宣言するのが相当である。

検討

支払督促に対して,仮執行宣言後に異議が申し立てられて移行した通常訴訟の審判対象等に関しては,以下の争いがあった。
1説:審判の対象は,異議申立てが仮執行宣言の前後のいずれであったかを問わず,全く新たな訴えの場合と同様,給付請求の当否である。したがって,判決主文は,仮執行宣言付か単純な給付命令又は請求棄却となる。
2説:審判の対象は,上訴と同様に,支払督促に対する異議の当否である。したがって,判決主文は,異議の棄却か,支払督促の取消し・請求棄却となる。
3節:審判の対象はあくまで請求の当否であるが,請求に理由があるときは支払督促を維持し,請求に理由がないときは支払督促の取消し・請求棄却とする。

3説が多数説であり,本判決もこの説を採ったものと思われる。

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