大審院昭和5年(ク)第1070号口頭弁論期日申請却下決定に対する抗告事件
昭和6年4月22日決定
大審院民事判例集10巻7号380頁
判旨
訴訟上の和解も,訴訟物たる私法上の権利又は法律関係についてなされた和解は常に
私法上の契約にして訴訟上これが締結されたからといって,その性質が変わるもので
はない。
したがって,要素の錯誤があれば和解契約は無効であるから,有効であることを前提
として訴訟を終了させる旨の合意は効力を生ぜず,訴訟は存続することになる。
したがって,訴訟上の和解成立後に,当事者が訴訟物たる私法上の権利関係について
の私法上の和解が意思表示の要素に錯誤があるから無効であると主張して期日指定を
申し立てたときは,裁判所は,要素の錯誤があって契約が無効であるか否か,換言す
れば訴訟がなお存続するか否かを,口頭弁論を開いて調査して,判決をもって裁判す
べきであって,単に,訴訟上の和解があるからといって,期日の指定を拒むことはで
きない。
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